釘崎野薔薇が好き;少年漫画的なこと
こんにちは、RTです。
小学生のころから、少年漫画が好きだ。低学年の頃は、親に買ってもらえるのは小学館の「小学〇年生」ばかりで、あまり読む機会もなかったのだけど、テレビアニメでワンピースを観るようになり、コミックスにも手を伸ばし、そこからどんどん少年漫画が好きになっていった。ジャンプを毎週読むようになったのは、実は高校生と遅かったのだけど、それ以来今に至るまでジャンプはほとんど欠かさず読んできた。たぶんおっさんになっても読んでいるんだろう。
ここ数年、ジャンプを読んでいて、すごく面白いと思う作品が多い。
ワンピースは今でもその壮大な世界観が好きだし、最近最終話を迎えた約束のネバーランドも鬼滅の刃も、設定がかなりしっかりしていて面白かった。
ここ一か月で一気に引き込まれているのはチェンソーマン。これはなかなか濃密。最初は、絵のタッチがあまり好きになれず、そんなに追ってなかったんだけど、展開の深さとか表現の独特さがすごく面白い。先週号ごろからのシーンの中で、ある敵キャラが街を破壊している描写があるのだけど、そこで破壊によって死亡した全ての(本来名もない)市民の名前が羅列される。この表現にはやられてしまった。漫画全体の中での緊迫感みたいなものが一気に引き上げられてすごくドキドキした。ぜひ一度、ゆっくり集中して読んでほしい漫画。
そして、もう一つ最近本当に好きなのが「呪術廻戦」。呪術を学ぶ都立高校を舞台に、呪術師と呪いの戦いが描かれる。
この漫画について、好きな部分は色々ある。一つは、設定の精緻さ。
漫画やアニメを観ていると、「あれ、ここって設定が矛盾してないか?うーん、まあ少年漫画だし、いいのかなあ」となんとなくもやっとすることが結構あるのだけど、この漫画はそのあたりの設定がかなりしっかりしている。呪術なんて、結局は「理の外」の話なわけだから、空を飛ぼうが炎を吐こうが質量が保存されまいが、なんだってありなわけだけど、それをそれで終わらせず、結構緻密に理論を構築している(もちろん、呪術の話なので、それが現実に成立するとかいう話ではなく)。なので、細かい設定の不備に気を取られることなくストーリーに集中できる。
そして、これが一番好きなのだけど、色々な事情で悩みを抱えている登場人物たちの、血の通った言葉がすごくぐっとくる。タイトルに書いた「釘崎野薔薇」は、そんな登場人物たちのなかで一番好きなキャラクター。主人公の男子生徒の、2人しかいない同級生の1人。田舎から出てきて都会生活に対するミーハーな憧れがある女の子なのだけど、過去に田舎で目にしてきた出来事(まだ断片的にしか描かれていない)を通して、閉鎖的な環境や考え方に対して反発し、そうであるという自分の意思をかなりはっきりと表せるという魅力がある。
この魅力が強く出ていたのが、第41話「京都姉妹校交流会―団体戦⑧―」の中でのセリフ。このセリフを聞いたときに、私は人としてこの釘崎野薔薇というキャラクターに惚れてしまった。
このあたりでは、東京と京都の呪術学校が対抗戦を行っているのだが、ある理由で京都校は、主人公である男子生徒を正義の名の下で殺害する計画を立てる。いろいろな事情が絡んでいるのだけど、釘崎をはじめとした東京校の仲間はこれに対し、怒りをあらわし計画を頓挫させようとする。
そしてこの場面では、対戦相手である京都校の女子生徒が、釘崎に自分の心酔する同級生の女の子のことをばかにするような言葉で煽られたことに対して、「名家に生まれ女性として呪術師の世界で生きることがどれほど大変か」を力説したところへのレスポンスの場面。
うるせえよ
不幸なら何しても許されんのかよ
じゃあ何か?逆に恵まれた人間が後ろ指差されりゃ満足か?
どんな生い立ちだろうと、私はアイツが気に食わねえ
同じ生い立ちでも、私は真希さんが大好きだ
テメェらこそ、これから呪おうとしてるバカがどんな人間か、少しは考えたことあるのかよ
”完璧”も”理不尽”も応える義務がどこにある?
テメェの人生は仕事かよ
・・・
男がどうとか、女がどうとか
知ったこっちゃねーんだよ!!
テメェらだけで勝手にやってろ!!
私は、綺麗におしゃれしている私が大好きだ!!
強くあろうとする私が大好きだ!!
私は、「釘崎野薔薇」なんだよ!!
芥見下々「呪術廻戦」 第41話「京都姉妹校交流会―団体戦⑧―」
最後の一言、なんてスカッとするセリフだろう。このセリフとともに相手に対して勝利を決める一撃をくらわせる。表現としてはいささか時代遅れかもしれないが、本当にしびれた。
細かい部分で入り込めない部分もあるかもしれないけど、最後の「私は、「釘崎野薔薇」なんだよ!!」を激情しながら叫ぶキャラクターをかっこいいと思えそうな方は、ぜひこの漫画を手に取ってほしい。この場面は5巻収録。そんなにかからないのでぜひとも。
にしても、こういうセリフって少年漫画の醍醐味だと思う。社会生活に適合できないもやもやを抱えているときに、心のどこかでこんな一言を叫びたい気持ちもあったりする。
最後に、個人的にこのセリフとすごく重なる部分が大きいなと思う、少年漫画的精神を歌った、愛すべき毛皮のマリーズの名曲がこちら。動画の下に引用したこの曲の歌詞と、「私は、「釘崎野薔薇」なんだよ!!」はほとんど同じ精神なんじゃないかと思う。
私は 人生複雑骨折 ドラマ型統合失調症
ヒステリックだがストイック
ヒロイック、パセティックでロマンチック
「誰かが私を待っている」…と、言いながら誰かを待ってました
昔のロックを聴きながら
今週のジャンプに泣きながら
彼らは私にこう言った
「ボウズ、最後は必ず正義が勝つ」
そして開演のベルは鳴り
ビリー・シアーズの登場です
ビューティフルに、ビューティフルに生きて 死ぬ、ための 僕らの 人生 人生!
毛皮のマリーズ「ビューティフル」
たまらない、この歌詞。初めて聴いたとき、「私は人生複雑骨折 ドラマ型統合失調症」だけで泣きそうになった。
少年漫画的な理想像を胸に抱きながら、理不尽を「うるせえ!」と偏った熱意で黙らせながら、ビューティフルに生きて、死んでいくようなそんな素敵な人生にできたらいいなと思う。